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ラマンサンプリングの課題を解決 Raster Orbital Scanning(ROS) 

従来の携帯用ラマンシステムは分散型です。分散型の欠点は、レーザのスポット径と分解能のトレードオフが発生することです。最も旧来式の機器のレーザスポット径は非常に小さく、この強く収束したビームは高分解能を実現しますが、ターゲットとなる物質を完全に見失う可能性もあります。径の大きいビームを用いてサンプリングエリアを拡大するためにはアパーチャも拡大する必要があり、その結果分解能が低下しライブラリのマッチングを正確に行うことが困難なため、誤識別が発生しやすくなります。 オーシャンオプティクスはこれまでない光焦点技術により、このようなサンプリングの問題を解決しました。Raster Orbital Scanning (ROS)技術は、高分解能を保ち、ラマンアプリケーションでよく用いられる強い収束のレーザ光の集積を最小に抑えながらも、ターゲットマテリアルのサンプリングが可能です。

ROSサンプリングのメリット

図1

図1の左側は、赤丸で示されているラマンアクティブなコンポーネントをサンプル表面からサンプリングする各種手法を示しています。上段は強く収束した静的なビームです。中段は焦点が大きなレーザビーム、そして下段はROSスキャニングを図示しています。薄いピンクのビームは、ROSサンプリングの特徴である、強く収束したレーザビームのサンプル表面での動きを示しています。
図の右側は、強く収束した小径のレーザビームがラマン信号の収集に使用された場合に得られる高分解能性を示しています。より低い分解能しか得られない径の大きいビームによる測定結果と比較し、ROSスキャンニングは高分解能を実現しています。これにより、サンプルの正確な識別が可能です。

ROS技術による硝酸アンモニウムと尿素の比較

図2

ROSの効力を示す良い例が、一般的な爆発物であり他の物質に見せかけ手製爆弾として用いられる可能性がある硝酸アンモニウム(AN)と、肥料として利用されることが多い尿素のラマンスペクトルの比較です。 ANと尿素の顆粒(ペレット)は見た目が似ているため、大量のサンプルを目視で見分けることは非常に困難です。しかしながら、ROS技術でラマン分析を行えば従来のラマン分析では不可能だった識別を行う事が可能になります。 静的なサンプリングでは、図2のオレンジ色の矢印で示される、強く収束したレーザビームを用い、一箇所のサンプルのみを測定します。ROSサンプリングの測定サンプル部位は、図中の二本の青い矢印と長円形の部分で示されています。 青い矢印に囲まれているように、サンプル面積が格段に大きいので、一個の顆粒に集光することなく硝酸アンモニウムの正確な識別が可能であることを示しています。

図3

図3の硝酸アンモニウムのスペクトルから、広い面積を測定したROSサンプリングでは、不規則な形の不均一なサンプルからでも高品質で高感度のデータを取得でき、確度の高い識別が可能であることが明らかです。 図3で示されているように、尿素と硝酸アンモニウムのラマンスペクトルにおける最大ピークは、ほんの10cm-1程度しか離れていません。この場合、充分にシグナル強度を稼げないことと分解能が低いことによって、この二つの化合物を誤って識別する結果になることもありえます。

ROS技術と、慎重な扱いを要するサンプル

図4

ROSのもう一つのメリットは、サンプルに照射される平均出力が低いことです。これは、爆発物や感光性のある化合物サンプルを測定する場合に重要な特色です。高出力のレーザを走査することで、10倍の面積に照射されるトータルのレーザパワーを弱めるので、平均出力が大幅に減少します。

図4は、高いレーザパワーによりサンプルが損傷し、化合物の誤認につながる例です。図4の赤線は硝酸アンモニウムのラマンスペクトルです。高いレーザ出力を用いると分解生成物が生成され、図中の緑線のラマン信号が発生します。 分解生成物は、硝酸カルシウムのスペクトル(図4、紫線)と識別されます。ROSでは、サンプルを損傷することなく、高い瞬時出力と低い平均出力を測定に利用することができます。

図5

また別の例をご紹介します。図5の黒い粉末は硫黄、炭(炭素)、硝酸カリウムという3種の単純な組成から成る爆発物です。硫黄と炭素は、酸化剤として作用する硝酸カリウムがあれば爆発物となり得ます。左記のラマン強度と波数単位のプロット図のように、バックグラウンドの補正やその他の処理が無い状態で測定された黒い粉末の生スペクトルから、粉末の3種の主成分に相当するピーク波長が識別されます。 爆発物や可燃物の識別や測定は、引火や爆発の恐れがあるため、通常ラマン測定は推奨されません。しかし、ROS技術ではサンプルに引火することなく、黒い粉末の測定を行う事が可能です。

革新的なROS技術はIDRamanシリーズに採用されています。IDRaman readerはベンチトップラマンシステムで、表面測定、キュベット測定、バイアル測定に対応しています。IDRaman miniは手のひらサイズのポータブルラマン測定器で、ディスプレイを内蔵し、ライブラリマッチングソフトウェアが付属しています。

ROS技術採用のラマンシステム

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