ある調査によると、驚くべきことに多くの黄疸治療用の青色光源システムが、集中光線療法(PT)における最小推奨放射照度値を満たしていないことが判明しました。
60年以上にわたり、集中光線療法(PT)は、世界中で正期産児および正期産に近い新生児の高ビリルビン血症を効果的に治療するために使用されてきました。新生児高ビリルビン血症は、世界中で毎年50万人以上の新生児が罹患しています。新生児高ビリルビン血症は治療を怠ると、核黄疸、脳症、難聴、舞踏アテトーゼ型脳性麻痺、発作、発達遅延、その他の神経障害など、多くの永続的な障害を引き起こす可能性があります。さらに、自閉症のリスク増加とも関連しています。
光線療法は、重度の非遺伝性または病気による乳児黄疸に対する初期治療法として広く利用されており、輸血の必要性を減少させ、病院以外の診療所や自宅での治療を可能にします。また、光線療法は、多くの症例において乳児の神経発達の改善に寄与することが知られています。
米国小児科学会の現在の推奨事項によれば、集中光線療法(PT)では、460~490 nmの波長帯域で少なくとも30 µW/cm2/nmの光を、体表面積全体にできるだけ均等に照射することが求められています。
最近の調査では、国内外の光線療法機器の放射照度の変動を調べた結果、多くの機器がこの推奨されるスペクトル放射照度の最小値を満たしていないことが判明しました。この不足は、光源の経年劣化や状態、新生児との距離、さらに人工呼吸器など、光の照射を妨げる他の機器によるさまざまな要因が影響している可能性があります。
全ての光源は経年劣化します。経年劣化によってランプの強度(放射する光の量)が低下すると、スペクトル形状まで変化する可能性があります。ランプだけでなく組み込まれている反射板、拡散版、レンズ、そして電源の安定性等の環境要因もランプの性能に影響を与える可能性があります。また、ランプの種類によって劣化の度合いが異なります。例えば、LEDと蛍光灯やハロゲン電球では劣化の度合いが大きく異なります。
分光放射照度の推奨ガイドラインは近年変更されました。米国小児科学会における現在のガイドラインでは、460~490 nmの波長帯域で少なくとも 30 µW/cm2/nm を推奨しています。以前のガイドラインでは430~490nmのより広い波長帯域が推奨されていました。現在も多くのメーカそして医師が、この古いガイドラインを使用しています。また、420~500nmの分光放射照度の波長帯域を推奨する専門家もいます。アメリカ国立衛生研究所による最近の研究では、同じ放射照度であってもピーク波長が490nm付近の蛍光光源の方が、ピーク波長が450nmのものよりも大幅に効果的であることが確認されました。さらに、ピーク波長が476nm付近のLEDが光線療法に最も効果的であり、また、無駄な光の吸収を避けることで乳児への熱負担の軽減が可能であることも確認されました。
ヨーロッパの青色光線療法機器を製造するメーカは、IEC60601-2-50という規格に基づき機器のテストが義務付けられていますが、米国にはそのような規格は存在しません。さらにヨーロッパの一部の国では治療を行う前にその都度、光線療法に使用するランプの放射照度の測定を推奨しています。それに対し米国では、多くの病院や医療機関が独自のプロトコルで医療行為を行っています。
高ビリルビン血症の治療に使用される光線療法システムの青色光を測定する測定器は、大きく『分光放射計』と『青色フィルタ付き放射計』の2種類に分類されます。
分光放射計は光の強度と分光分布(放射される光の波長)の両方の測定が可能です。分光放射計は経年劣化しやすい光源の測定に最適ですが、取り扱いが複雑で、データの解析には専門知識が必要となり、また購入費用も高くなります。
青色フィルタ付き放射計は、実際の照射環境に設置することで、患者の皮膚に到達する光の強度(放射照度W/cm2、分光放射照度μW/cm2/nm)を測定します。一般的にこれらの放射計はメータとセンサで構成され、フィルタ処理され、特定のピーク波長で青色の光を検出する為に校正されています。測定器メーカと光源では異なる波長特性を持っている為、個々の仕様に合わせ独自に校正した測定器を使用するケースもあります。光源の波長に最適な測定器を選定することは時に非常に困難です。420~520nmの範囲で光源のテストを行う必要があるのにも関わらず、450~490nmに対応した測定器が使用されていることもあります。
使用する測定器の種類にかかわらず、光パッドや光源の測定は面倒で時間の掛かる作業で、多忙なNICUの現場には不向きです。ほとんどの測定器は、患者の皮膚表面の広い範囲における照射される光を評価するために、複数ポイント測定を行いなす。これらの測定値を合計し、測定箇所の数で割り平均照度を算出する必要があります。このプロセスには3~4分程かかり、非常に手間がかかります。
病院ごとの光線療法ランプの検証方法の違いを調査委している研究者は、複雑かつ時間的な制約の為、テストと検証は実用的ではないと指摘しています。米国小児科学会が推奨する30μW/cm2/nmの要件をテストそして検証しなければ、ランプ出力・セットアップ・ワーキングディスタンス等の変化の影響により、照射レベルが不正確となるリスクが高まります。
私たちは、ひとつの測定器でこれらの多くの課題を解決することを目指しています。ILT750は平均放射照度を自動的に数秒で測定し、間を空けることなく測定できるように設計されています。検出部分を光源の下、もしくはビリパッド上でスキャンするだけで、他の作業は全て測定器が行います。下記のデモビデオをご覧ください。
ILT750は従来の製品と、仕様がアップデートされた新しい製品の両方に対応できるよう、2種類のバージョンをご用意しています。
ILT750-Biliは470 nmに感度のピークを持っており、ビリルビンの作用スペクトルに正確に一致するようにインターナショナルライト社独自のバンドパスフィルターを組み込んでいます。ILT750-Biliは従来の蛍光灯、ハロゲン、LED等、様々の光源の測定に最適です。
ILT750-Bili454は、現在製造終了となっているGE社製Ohmedaメータ(BiliBlanketⅡ)の直接的な代替品として設計されています。もし現在、Giraffe、Lullaby、Bilisoft、その他の従来のGE社製ブルーライトシステムをお使いの場合、ILT750-Bili454はOhmedaメータと数%以内の測定誤差で測定が可能です。ILT750-Bili454はGE社LEDを使用して454nmの波長にて校正され、最適な波長バンドにおける放射照度の計算を実現します。
どちらのモデルもISO/IEC17025:2017に準拠した校正証明書が付属し、共にクラス1医療機器として分類されています。