放射率とは、物体にエネルギーを与えた時に、熱放射(輝度)として放出されるエネルギー量に対して、同温度の黒体放射のエネルギーを1とした時に比率で表される量です。0から1の値を取る無次元量です。
光を物体に照射すると、反射、透過、吸収が生じます。エネルギー保存則から、下記のように表すことができます。
入射エネルギー = 反射エネルギー + 透過エネルギー + 吸収エネルギー ...①
光を計測する場合は、反射されるエネルギー、透過するエネルギーを測定することができ、入射したエネルギーから反射、透過したエネルギーを引くことで吸収されたエネルギーを計算することができます。一般的に、吸収されたエネルギーは物質の温度を上げる効果があります。定常的にエネルギーを入射し続けると、温度が一定となります。これは、吸収したエネルギーが熱放射として放射されるエネルギー(輻射熱)と釣り合い、熱的な平衡状態となるためです。
反射率 + 透過率 + 吸収率 = 1 ...②
熱平衡下にある不透明の物質(温度が一定の状態にある物質)である場合、下記のように表すことができます。
透過率 = 0 ← 不透明であり、透過するエネルギーはない
吸収率 = 放射率 ← 熱平衡であり吸収したエネルギーはすべて放射される(キルヒホッフの法則として知られています)
このとき、②式は、下記のように表すことができます。
反射率 + 放射率 = 1 ...③
反射率 = 1 - 放射率 ...④
この式から、反射率を大きくする(1に近づける)ためには、放射率を小さくするのが良いことがわかります。また逆に放射率を大きくするためには反射率を小さくすると良いことになります。これらの関係式は、目に見える光だけではなく、紫外線や赤外線、電波などすべての波長範囲で成り立ちます。放射率と反射率は相補的な関係にあるため、物質表面での光エネルギーのやり取りを考慮する際に重要なパラメータです。また放射率は、物体の「材料」、「表面状態」、「温度」などにより変化します。
一般的に、放射率は次のような値となります。
・鏡面状の金属表面:ほぼ0
・黒いザラザラした表面:ほぼ1
・ゴム、セラミック:0.95
・人の肌:0.98
太陽光により建物内の温度をあげないようにするために、反射率の大きい(=放射率の小さい)外壁を選択します。
車載用Lidarの特性評価に、車両表面の反射率が重要となります。反射率の高い材料を選ぶために、放射率を数値化しておくと特性評価ができるようになります。
放射温度計は、放射率を事前に測定し、黒体放射の放射輝度と比較することで、物体の温度を非接触で測定することができます。
弊社取り扱いのサーフェスオプティクス社製反射率計は、反射率、放射率を簡単に計測可能です。また、ハンドヘルド型であり、実験室や屋内試験だけではなく、建築物そのものの外壁や路上の車両など現場での計測が可能です。製品の詳細は下記をご覧ください。